空冷ポルシェの歴史

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初代 901型 通称ナロー(1963年-1974年)

1963年356の後継車としてフランクフルト・ショーでプロトタイプがデビューし、1964年から本格生産に入った。通称「ナロー」。日本にはミツワ自動車により1965年より輸入されている。技術担当重役はF.トマラ、エンジン開発主任はフェルディナント・ピエヒ、スタイリングはフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが担当した。

エンジンは新たに開発された水平対向6気筒でボアφ80mm×ストローク66mm。低騒音と高出力を兼ね備えており将来性があるとの観点から、従来のプッシュロッド式に換えてSOHCが採用された。排気量は大きなマージンを取りかつ手の届きやすい価格にするため排気量1,991ccになったものの、後の市場の要求次第で2.7Lくらいまで拡大できるようになっていた。総アルミニウム合金製のクランクケース、チェーン駆動されるカムシャフト、ドライサンプ、鉄をアルミフィンで包んだバイラル構造シリンダー、軸流式冷却ファン等が特徴点として挙げられる。キャブレターはソレックストリプルチョーク40PIオーバーフロー型をツインキャブで採用していた。クラッチはフィヒテル&ザックス(Fichtel & Sachs 、現ZF)が生産した砂型アルミニウム鋳物製で軸間距離は68mm、φ215mm単板ダイアフラム式。

全長は4163mm。全幅は1,610mm。ホイールベースは2,211mm。トレッドは前1,337mm、後1,317mm。リムは前後とも4.5J15in。タイヤは前後とも165HR15。ブレーキは1系統でパッド面積前52.5cm2、後40cm2。オルタネーターは490W。

2代目 930型(1974年-1989年)

1973年フランクフルト・モーターショーで「911ターボ」試作車が展示され、280馬力で最高速度280km/hとアナウンスされていた。1974年パリサロンに「930ターボ」試作車が展示された。生産車はボア×ストロークφ95mm×70.4mmで2,994cc、圧縮比6.5の930/50型エンジンを搭載、ボッシュKEジェトロニックとブースト圧0.8気圧のKKK製ターボチャージャーで260馬力/5,500rpm、35.0kgm/4,500rpm。日本仕様は昭和50年規制に適合するため等で245馬力/5,500rpm、35.0kgm/4,000rpm。大パワーに対応するタイヤを納めるべくフェンダーを備え全幅は1,775mmまで拡げられた。1978年モデルからはカタログ上の名称は1978年「ターボ」、1979年「930ターボ」、1980年「911ターボ」と変遷しているが、特別大きな変更はない。豪華な内装をもつ高性能スポーツカーとして高価格ながら販売は好調であった。トランスミッションは当初4速MT930型であり、ポルシェは「ありあまるパワーには4速で充分」と説明したが、「ポルシェシンクロトランスミッションの許容量がターボのパワーに耐え切れずやむなく4速にした」というのが通説。クラッチ径はφ240mm。

3代目 964型(1989年-1993年)

1989年にデビューした964型は、930型似の外観をまとってはいるものの、80%ものパーツを新製するといった手の込んだ手法を採ることとなった。なかでも特筆されるのはボディー構造が一般的なモノコックとなったことと、サスペンションがフロントマクファーソンストラット+コイルスプリング、リアがセミトレーリングアーム+コイルスプリングに変更されたことの2つである。これにより一気に現代的なハンドリングを得ることに成功、「最新のポルシェは最良のポルシェ」という言葉の価値を一層高める一助となり、エンジニアの多大な労苦は報われることになった。エンジンはボアφ100mm×ストローク76.4mmで3,600ccに拡大され、圧縮比11.3で250馬力/6,100rpm、31.6kgm/4,800rpm。4WDに対応するためフロアセンターは高くなっている。リアスポイラーは電動格納式。ボディーは当初よりクーペ、タルガ、カブリオレの3種が提供された。1992年モデルからカブリオレターボルックが追加され、1993年にスピードスターが追加された。

4代目 993型(1993年-1997年)

空冷最後のモデルとなる。キャビン周りに964型のシルエットを残しながら、太腿とも呼ばれたフロントフェンダーの峰は低くなり、テールエンドのデザインも一新された。拡大されたリアフェンダーはマフラー容量の増大と、左右独立等長のエキゾーストをも実現し、排気系の改善に寄与した。リアサスペンションに採用されたマルチリンクのスペースを確保するため、リアフェンダーもそれまでよりさらに拡幅される(964までのNAモデルは日本の5ナンバー枠に収まる)。1989年にハーム・ラガーイのデザインで発表されたコンセプトカー「ポルシェ・パナメリカーナ」との共通点を多く見受けることができる。

このモデルまでは「ナロー」から連綿と続く室内レイアウトが共通であり、「ポルシェを着る」とされたタイト感が残る最後のモデルとも言える。ただし964型同様エンジン音は静かで快適性は向上している。「最後の空冷」のキーワードで中古での価格も低くない。

1996年、可変吸気機構である「バリオラム」を装備、カレラで13馬力アップした285馬力、カレラ4で15馬力アップした300馬力となった。ボッシュのHIDランプシステム「リトロニック」をオプション設定。タルガ追加、脱着式だった964型までとは異なりベバス製電動スライディング・グラストップに変更されスタイルもクーペのようなファストバックとなった。

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